前回の記事では、家のルータからNTTの局舎、ISP、データセンターまで、データが通る「道」を物理的にたどりました。今回は同じ通信を、データの中身の側から見ていきます。
道が用意されていても、データには「誰あての荷物か」「どの順番で、どの部屋に届けるか」という情報が必要です。その役割を担うのが、IPアドレスやMACアドレス、そしてTCPやHTTPといったルール(プロトコル)です。
この記事で分かること
- 通信を階層に分けて考えるOSI基本参照モデルの全体像
- IPアドレスとMACアドレスの違いと、それぞれの使われ方
- TCP・UDP、ポート番号、DNS、HTTPなど上位層のしくみ
1.全体像:OSI基本参照モデルについて
ネットワークの通信は、たくさんの仕事を「階層」に分けて考えます。
最終的な宛先を知らせる層、データの中身を保護する層、経由するルータを知らせる層などです。
そして、この階層の分け方には、2つの代表的なモデルがあります。
- OSI基本参照モデル:国際標準化機構(ISO)が定めた7層のモデル。理論上の「教科書」で、試験ではこちらの層の名前がよく問われます。
- TCP/IP:インターネットで実際に使われている4層のモデル。OSIのいくつかの層をまとめた形になっています。
第一層「物理層」は前回お話したアクセス回線、ISPといった物理的な線のお話で、今回の論理編では、2層3層をメインにお伝えします。

手紙に例えると、、
層の考え方は、手紙を送る流れにたとえると分かりやすくなります。
| 層 | 手紙でいうと |
|---|---|
| アプリケーション層 | 手紙の文面(何を伝えるか) |
| トランスポート層 | 届いたかの確認、追跡サービス |
| ネットワーク層(IP) | 封筒に書く相手の住所 |
| データリンク層(MAC) | 次の郵便局へ渡すときの、引き継ぎ先の名札 |
| 物理層 | トラックや道路 |
送る側では、上の層から順に宛先などの情報(ヘッダ)を付け足しながら下へ渡し、受け取る側では下から順に外していきます。手紙を封筒に入れ、さらに段ボールに詰めて送るイメージです。
2.IPアドレスとは
IPアドレスは、ネットワーク上の機器を見分けるための住所です。第3層(ネットワーク層)のIPというルールで使われ、データの最終的な宛先を示します。手紙でいえば、封筒に書く「相手の住所」です。
IPアドレスの種類
IPアドレスは2種類に分けられます。
- グローバルIPアドレス:インターネット上で重複しない、世界にひとつの住所。ISPから割り当てられます。
- プライベートIPアドレス:家や会社の中(LAN)だけで使う住所。ほかの家と同じ番号でもかまいません。

グローバルIPアドレスは本名、プライベートIPアドレスはあだ名、のイメージです。
本名があれば個人を特定することができます。(同姓同名もいますが、、)
一方、「よっちゃん」というあだ名は日本全国にありますが、仲間内では誰を指しているか特定できますよね!
なので、インターネットでもLANではわざわざグローバルIP(本名)で呼ばず、プライベートIP(あだ名)でやり取りしています。
補足:IPv4とIPv6
| 種類 | 長さ | 表記の例 | 用意できる数 |
|---|---|---|---|
| IPv4 | 32ビット | 192.168.1.10 | 約43億個 |
| IPv6 | 128ビット | 2001:db8::1 | ほぼ無限(約340澗個) |
IPv4は、32ビットを8ビットずつ4つに区切って10進数で書きます。インターネットの広がりで約43億個では足りなくなり、後継としてIPv6が作られました。

住所の数が足りなくなったので、住所の書き方を変えたんですね!
補足:ネットワーク部とホスト部(基本情報向け)
IPアドレスは、前半の「どのネットワークか(ネットワーク部)」と、後半の「そのネットワークの中のどの機器か(ホスト部)」に分かれています。住所でいえば「〇〇町」と「〇番地」です。
どこまでがネットワーク部かを示すのがサブネットマスクです。「192.168.1.0/24」の「/24」は、先頭の24ビットがネットワーク部という意味で、サブネットマスクで書くと 255.255.255.0 になります。この場合ホスト部は8ビットなので、機器に割り当てられる数は 2^8 − 2 = 254個です(ホスト部がすべて0のネットワークアドレスと、すべて1のブロードキャストアドレスは使えないため2を引きます)。
3. MACアドレスとは
MACアドレスは、ネットワークにつながる部品(LANポートやWi-Fiの通信部品)ごとに、工場で付けられる番号です。第2層(データリンク層)で使われます。

インターネットにつながるすべての機器にMACアドレスはあります!
あなたのスマホ、パソコン、お家のルータなど!
IPアドレスとの違い:「最終の宛先」と「次の渡し先」
どちらも「アドレス」なので混同しやすいですが、役割ははっきり違います。
- IPアドレス:最終的な宛先。スマホからWebサーバまで、最後まで変わりません。
- MACアドレス:同じネットワークの中での「次の渡し先」。ルータを越えるたびに書き換えられます。
実際にはもっと多くのルータを通りますが、考え方は同じです。
宅配便にたとえると、伝票の「お届け先の住所」がIPアドレス、営業所から営業所へ荷物を渡すときの「次の担当者」がMACアドレスです。
下の図を基に説明すると、
IPアドレス:郵便先の家の住所。郵便局を経由しても住所が変わることはない
MACアドレス:次の郵便局の住所。郵便局を経由するたびに、次の郵便局の住所へと変わる

(基本情報向け)ARP:IPアドレスからMACアドレスを調べる
データを送るとき、次の渡し先のIPアドレスは分かっていても、MACアドレスは分からないことがあります。そこで使うのがARPです。
- 「192.168.1.1 の人、MACアドレスを教えて!」とLAN全体に呼びかける(ブロードキャスト)
- 該当する機器だけが「私です。MACアドレスは〇〇です」と返事をする
- 分かった組み合わせはしばらく覚えておき、次回からは呼びかけを省く
試験のポイント:「IPアドレスからMACアドレスを求める」と書かれていたらARPです。ドメイン名からIPアドレスを求めるDNSとの混同を狙った選択肢がよく出ます。
4. その他:上位層のしくみ
IPアドレスとMACアドレスで、データは目的の機器まで届くようになりました。その上の層では、「どのアプリに渡すか」「確実に届けるか」「何をやり取りするか」を決めています。
TCPとUDP(第4層 トランスポート層)
データが本当に宛先に届いたか、確認する/再送する層がトランスポート層です。郵便でいうところの追跡サービスに近いですね。
トランスポート層の代表がTCPとUDPです。どちらもデータを運びますが、性格が正反対です。
| TCP | UDP | |
|---|---|---|
| 方式 | 通信の前に接続を確立する(コネクション型) | いきなり送る(コネクションレス型) |
| 信頼性 | 高い。届いたか確認し、欠けたら送り直す | 低い。確認も送り直しもしない |
| 速さ | やや遅い | 速い |
| たとえ | 書留郵便 | チラシのポスティング |
| 使われる場面 | Web、メール、ファイル転送 | 動画配信、音声通話、オンラインゲーム |
TCPは、通信を始める前に「送っていい?」「いいよ」「じゃあ送るね」と3回やり取りします。これを3ウェイハンドシェイクと呼びます。
ポート番号:どのアプリに渡すか
IPアドレスが「建物の住所」なら、ポート番号は「部屋番号」です。同じパソコンの中でも、ブラウザやメールソフトなど、どのアプリにデータを渡すかをポート番号で区別します。
| ポート番号 | プロトコル | 用途 |
|---|---|---|
| 20 / 21 | FTP | ファイル転送 |
| 22 | SSH | 暗号化した遠隔操作 |
| 25 | SMTP | メール送信 |
| 53 | DNS | 名前解決 |
| 80 | HTTP | Web閲覧 |
| 110 | POP3 | メール受信(端末にダウンロード) |
| 143 | IMAP | メール受信(サーバ上で管理) |
| 443 | HTTPS | 暗号化したWeb閲覧 |
補足:アプリケーション層の主なプロトコル
- DNS:「example.com」のようなドメイン名を、IPアドレスに変換します(名前解決)。スマホの電話帳で、名前から電話番号を引くイメージです。
- DHCP:機器がネットワークにつながったとき、IPアドレスなどの設定を自動で配ります。家のWi-Fiにつなぐだけで使えるのは、ルータがDHCPの役目をしているからです。
- HTTP / HTTPS:ブラウザとWebサーバの会話のルールです。ブラウザが「このページをください」(リクエスト)と頼み、サーバが「どうぞ」(レスポンス)と返します。HTTPSは、その通信をTLSで暗号化したものです。
- SMTP / POP3 / IMAP:メールの送信(SMTP)と受信(POP3、IMAP)のルールです。
HTTPのレスポンスには、結果を表すステータスコードが付きます。200は成功、404は「ページが見つからない」、500は「サーバ側のエラー」です。サイト運営をしていると、404はよく目にする番号ですね。
全部つなげると:URLを入力してから表示されるまで
- DNSで、ドメイン名からWebサーバのIPアドレスを調べる
- TCPで、Webサーバのポート443番と接続を確立する
- HTTPSで「ページをください」と送る
- データには宛先のIPアドレスが付き、ルータがそれを見て中継する
- 区間ごとにARPで次の渡し先のMACアドレスを調べ、隣の機器へ渡していく
- Webサーバがページのデータを返し、ブラウザが表示する
まとめ
インターネットの通信は、役割の違う層が手分けして成り立っています。
- 全体像:OSI基本参照モデルは7層、実際のインターネットで使われるTCP/IPは4層
- IPアドレス(第3層):最終的な宛先。ルータはこれを見て中継する
- MACアドレス(第2層):同じネットワーク内の「次の渡し先」。区間ごとに書き換わり、ARPでIPアドレスから調べる
- 上位層:TCP・UDPとポート番号で「どのアプリに、どう届けるか」を決め、DNSやHTTPなどで中身をやり取りする
前回の物理的な道のり(家 → NTTの局舎 → ISP → データセンター)と、今回の論理的なしくみを重ねて考えると、インターネットがつながる理屈が立体的に見えてきます。
次回は、この通信を守るセキュリティ(ファイアウォール、VPN、暗号化など)を取り上げようと思います!


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